最高裁判所第一小法廷 昭和37年(オ)1128号 判決 1965年6月24日
上告人
松本ふね
ほか三名
右四名代理人
中村梅吉
榎本精一
大里一郎
南利三
南逸郎
被上告人滋賀県知事
谷口久次郎
補助参助人
堀川与次郎
ほか一一名
右一二名代理人
関田政雄
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告代理人南利三の上告理由第一点ないし第三点について。
論旨は、要するに、被上告人(被補助参加人)によつて本件控訴が適法に取り下げられたにもかかわらず、次回口頭弁論期日においてなされた補助参加人らのそれに対する異議の申立によつて、本訴は依然有効に係属しているとした原審の判断は、民訴法三六三条、六九条、六二条の解釈を誤つたもののである、と主張する。
しかし、本訴は訴願棄却裁決の取消を求める訴訟であり、公権力の行使に関する法律関係を対象とするものであつて、右法律関係は画一的に規制する必要があるものであるから、その取消判決は、第三者に対しても効力を有するものと解すべきである。従つて、かかる訴訟に参加した利害関係人は、民訴法六九条二項の適用を受けることなく、あたかも共同訴訟人のごとく訴訟行為をなし得べき地位を有するものであり、被参加人と参加人との間には同法六二条の規定が準用され、いわゆる共同訴訟的補助参加人と解するのが相当である。それ故、被参加人だけで控訴を取り下げたとしても、これによつて同控訴が当然効力を失うものではない、といわなければならない。そして、記録によれば、被上告人敗訴の第一審判決に対しその補助参加人らから控訴が提起されたところ、控訴審の昭和三〇年八月二九日午前一〇時の口頭弁論期日において被上告人の代理人が口頭をもつて本件控訴を取り下げる旨を陳述し、同年一一月四日午前一〇時の次回口頭弁論期日にいたり補助参加人らの代理人は「控訴人の控訴取下に同意し難い」と述べたことが明らかであり、右経過に徴すれば、前記控訴の取下は、被参加人だけでなされたもので、その効力を生ずるに由ないもの、といわなければならない。
されば、右と同趣旨に出た原判決は正当であつて、論旨は理由がない。
同第四点について。
論旨は、当事者の主張がないのに原判決が本件の補助参加を共同訴訟的補助参加と認めたことは弁論主義に違背する、と主張する。
しかし、当該補助参加を共同訴訟補助参加と認めるか否かは、法令の解釈に関する事柄であつて、所論のように弁論主義に服するものではない。それ故、所論の違法は認められない。
同第五点、第六点について。
論旨は、本件農地の売買が基準日たる昭和二〇年一一月二三日以後であるとした原審の判確に、事実誤認、審理不尽の違法がある、と主張する。
しかし、原審の右判示は、挙示の証拠に照らして是認し得ないわけではなく、その判断の経過に所論違法の点は認められない。それ故、論旨は理由がない。
同第七点について。
所論は本件農地を自作農創設特別措置法によつて遡及買収の対象としたことの違法をいうが、本件農地は農地調整法施行令の規定に基づき所有権移転の許可を受けた土地であつて、これを、自作農創設特別措置法によつて遡及買収することは、右二つの法律の趣旨、目的に照らし、何ら違法とは認められない。論旨は、独自の見解を述べるものであつて、採るを得ない。
上告代理人中村梅吉、同榎本精一、同大里一郎の上告理由第一点について。
論旨の理由のないことは、上告代理人南利三の上告理由第一点ないし第三点につき説示したところと同様である。
同第二点、第三点について。
原判決に所論経験則違背の違法は認められず、その余の論旨の理由のないことは、上告代理人南利三の上告理由第五点、第六点につき説示したところと同様である。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(入江俊郎 長部謹吾 松田二郎 岩田誠)